法人の税金対策としてレバレッジドリース(日本型オペレーティングリース)が人気を集めていますが、取引の仕組みがよく分からないという方も多いですよね。
ここでは、レバレッジドリースの仕組みと会計処理の方法について解説しています。
レバレッジドリースがどのような節税効果を持つのか、仕訳などの具体的な会計処理と合わせて見ていきましょう。
ファイナンシャルプランナー / 生命保険協会認定FP / MDRT成績資格会員
この記事の監修担当者:伊藤理沙
日系大手生命保険会社で活躍後、2015年より保険代理店に所属。ライフプラン、家計の見直し等の個人コンサルティングを主軸に、ライフプランセミナー等の講演活動も行っている。相談件数は2,000件以上。
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レバレッジドリースを活用した税金対策の仕組み
レバレッジドリースとは、金融機関からの融資を受けて元手を大きくし、購入した資産をリースすることでリース料などの利益を得るリース取引の1種です。
法人投資家は資産購入時の出資額に応じた減価償却費を計上できるため、高い節税効果が得られると近年注目を集めています。
まずは、レバレッジドリースの基本的な流れと、取引の仕組みがよく似ているファイナンスリースとの違いについて詳しく見ていきましょう。
オペレーティングリースのスキーム
レバレッジドリースは、現在では「日本型オペレーティングリース」という呼び方をすることが多いです。
これは2005年の税制改正で減価償却の会計処理が変更されたことによるものですが、取引の仕組みとしては同じものを指す言葉なので、どちらを使用しても問題ありません。
減価償却の会計処理については、後ほど詳しく解説していきます。
レバレッジドリース(オペレーティングリース)の主な物件は航空機・船舶・コンテナの3種類です。
ここでは、中でも人気の高い航空機リースを例にして、レバレッジドリースの流れを解説していきます。
- リース会社が匿名組合を立ち上げ、投資家(匿名)から航空機購入の資金を集める
- 投資家からの資金が不足している場合は金融機関から差額を借り入れる
- 出資金・借入金を使って航空機メーカーから航空機を購入する
- 購入した航空機で航空会社とリース契約を結び、リース会社がリース料を得る
- リース期間満了時に航空会社または市場が航空機を買い上げ、売却益が投資家に分配される
出資者はリース資産購入時に出資を行い、リース期間満了時にリース料・売却益といった利益の分配を受けるというのが基本的な仕組みです。
登場人物が多いため一見複雑に見えますが、貸し手(出資者)側の動きは意外とシンプルであることが分かります。
ファイナンスリースとの会計処理の違い
オペレーティングリースと同様の仕組みを持つリース取引に、ファイナンスリースがあります。
オペレーティングリースとファイナンスリースの違いは以下の通り。
オペレーティングリース取引 | ファイナンスリース取引 | |
---|---|---|
リース料の計算方法 | ノンフルペイアウト方式(リース期間中における物件の価値に合わせてリース料を設定) | フルペイアウト方式(物件にかかる費用の全額となるようリース料を設定) |
途中解約 | 原則不可 | 不可 |
減価償却の方法 | 定率法 | 定額法 |
基本的には「フルペイアウト方式・解約不可」のものがファイナンスリース、それ以外はオペレーティングリースと覚えておく良いでしょう。
また法人税を節税するには、減価償却の会計処理方法が「定率法」であることが重要なポイントです。(理由は後述)
節税対策としてリース取引を活用する場合は、必ずオペレーティングリースの商品を選択するようにしましょう。
レバレッジドリースの会計処理の方法とメリット
続いて、レバレッジドリースの会計処理・税務処理の特徴と、出資によって期待できる節税メリットについて解説していきます。
貸手側から見た会計処理の特徴
レバレッジドリースの会計処理では、出資金を金融商品取引法における「有価証券」として扱う点がポイントです。
これにより、リース資産自体の所有者が匿名組合となるため、減価償却費やリース料などの損益も匿名組合で計算されることになります。
しかし、匿名組合は出資の窓口となる団体であり、匿名組合自体が法人格を持っているわけではありません。
そのため匿名組合で計算された損益については、各法人投資家へ分配されたあとで課税が行われるのです。(=パススルー課税)
分配後の損益は会社の損益と通算で会計処理できるので、減価償却費を損失として計上することにより、課税所得の減少が可能となります。
なお、会計処理上は出資額を超える減価償却費が計上されますが、税務上の損金にできるのは出資額と同額までと定められています。
以前は出資額を上回る損金算入も可能でしたが、2005年度の税制改正でルール変更が行われました。
レバレッジによるリース節税効果が薄れたことで、リース取引の名称もレバレッジドリースからオペレーティングリースに変化したようです。
利益の繰り延べによる節税効果
レバレッジドリースでは、匿名組合の減価償却費を会社の損金として計上できる点に加え、減価償却を定率法で行うという会計処理方法も節税効果に関わっていきます。
定率法で減価償却を行う場合、物件を購入した年から数年間の減価償却費の割合が大きくなります。
そのため突発的な利益が出た年に出資を行えば、多額の減価償却費と利益との相殺が可能となり、課税所得が減少することで節税効果を得られる仕組みです。
物件によっては出資初年度に出資額の70%~80%を損金算入できる商品もあり、利益の繰り延べ策として幅広く活用されています。
事業承継における税金対策
レバレッジドリースの会計処理は、事業承継との相性も良いです。
事業承継にともなう株式移転では、贈与税・相続税が発生するため、保有量によっては一括での譲渡が難しいケースもあります。
ここでレバレッジドリースを活用すれば、減価償却費が計上されることで一時的に会社の評価(株価)を下げられるのです。
株価が下がったところで株式移転を行うことにより、贈与税・相続税を節税できます。
レバレッジドリースの損益は営業外損益となるため、会社の営業利益には影響が出ない点もメリットです。
またレバレッジドリースはリース期間満了時に益金が計上されますが、このときに事業承継を完了する(現社長の退職)ことで、益金と退職金の相殺が可能に。
事業承継のタイミングと合わせてレバレッジドリースを利用することで、更なる節税効果を期待できるでしょう。
航空機リースは資産運用にもおすすめ
レバレッジドリースの中でも、航空機リースは比較的運用が安定しており、利益を得やすい物件として人気を集めています。
お金儲けが目的の投資と比べて利回りは高くありませんが、少ないリスクで安定した運用ができる点がメリット。
航空機リースの需要判定基準となる世界人口も年々増加しているため、節税を行いつつ、多少の利益も得たいという方におすすめです。
ただし、現在は新型コロナウイルスの影響もあり、物件によっては航空会社の倒産リスクなどが高くなっている可能性も。
航空機リースを活用する際は、リース期間や金額だけでなく、航空会社の信頼性なども踏まえて商品を比較・検討することが大切です。
貸手側の会計処理を具体例ととも紹介
レバレッジドリースに関連する会計処理を行うタイミングは、基本的に出資のとき・決算のとき・利益が計上されるときの3種類です。
最後に、それぞれの貸し手における会計処理の方法を、具体的な仕訳例と合わせて見ていきましょう。
出資を行ったとき
匿名組合へ5,000万円の出資を行った場合の会計処理は以下の通り。
借方 | 貸方 |
---|---|
出資金:50,000,000 | 現金預金:50,000,000 |
保険会社や証券会社、またその他の紹介者を通している場合は、出資額と別に仲介手数料などが発生することもあります。
これらの費用については、出資に付随する費用として出資金に含めて会計処理を行います。
決算のとき(赤字)
匿名組合から2,000万円の損失が分配された場合の会計処理は以下の通りです。
借方 | 貸方 |
---|---|
特別損失:20,000,000 | 出資金:20,000,000 |
決算のとき(黒字)
匿名組合から700万円の利益が分配された場合の会計処理は以下の通りです。
借方 | 貸方 |
---|---|
出資金:7,000,000 | 受取配当金:7,000,000 |
リース期間が終了したとき
リース先との契約が終了し、物件の売却にともなう利益が200万円だった場合の会計処理は以下のようになります。
(前期までの出資金累計額が3,500万円、今期の利益分配金が売却益含め1,700万円だった場合)
借方 | 貸方 |
---|---|
現金預金:52,000,000 | 出資金:35,000,000 |
受取配当金:17,000,000 |
まとめ
- レバレッジドリースとは、銀行融資などでレバレッジをかけ、高額物件のリース取引を実現する仕組みのこと
- 「定率法による減価償却」「減価償却費の損益通算が可能」という会計処理の特徴を活かすことで、大きな節税効果が期待できる
- 事業承継と組み合わせたり、資産運用のために投資したりするといった活用方法も人気
難しそうに感じるレバレッジドリースですが、実はシンプルな会計処理のみで完結できる便利なスキームです。
新たにレバレッジドリースの利用を検討している方は、ぜひ一度「ひこうきの窓口」へお問い合わせください。