新型コロナウイルスの世界的な蔓延で、これまで安定的だったオペレーティングリースにも少なくない影響が発生しています。
これからオペレーティングリースやファイナンスリース取引を検討されていた会社の経営者の方にとっては、とても慎重に情報を集めたいところでしょう。
特に、オペレーティングリースでおすすめな物件の「飛行機」に関しても世界で見ると航空会社の破綻がニュースになっていたりします。
このページでは、そんな新型コロナウイルスのオペレーティングリースに与えている影響と、今後の見通しをご紹介していきます。
ファイナンシャルプランナー / 生命保険協会認定FP / MDRT成績資格会員
この記事の監修担当者:伊藤理沙
日系大手生命保険会社で活躍後、2015年より保険代理店に所属。ライフプラン、家計の見直し等の個人コンサルティングを主軸に、ライフプランセミナー等の講演活動も行っている。相談件数は2,000件以上。
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最近のコロナウイルスによるオペレーティングリースへの影響
節税の方法として人気のあるオペレーティングリースですが、中でも人気の物件の航空機、船舶、コンテナにコロナによる大きな影響が出ています。
特に、日本では緊急事態宣言の発令により、飛行機や船舶による国内外への移動、輸送が大幅に減少し、解除以降も厳しい状況が続いています。
訪日客数では、3月〜6月の時点で昨年同月比で-93%〜-99.9%となっており、世界中の飛行機のほとんどが運行されていません。
その結果航空業界の経済的なダメージは大きく、国外では航空会社の破産が起き始めている状況。
現段階でコロナウイルスの収束は未だ正確な目処は立っておりません。
これまでの航空会社の破綻情報
日本のJALやANAは持ち堪えていますが、世界中の航空会社をみるとかなり厳しい環境下の会社もあり、既に下記の航空会社では経営破綻が始まっています。
- モーリシャス航空(モーリシャス)
- ヴァージン・オーストラリア航空(オーストラリア)
- タイ国際航空の破綻(タイ)
- ガルーダ航空(インドネシア)
- アビアンカ航空(コロンビア)
- LATAM航空(チリ)
- アエロメヒコ(メキシコ)
※2020年8月まで
大きな航空会社が続々と破綻しており、LCCの航空会社だけでなくナショナルフラッグキャリアと呼ばれる、その国最大の航空会社もコロナショックにより破綻しています。
上記に上がっている航空会社の中には、オペレーティングリースのレッシー(賃借人)として航空機をリースしている場合もあり、企業の経営破綻によりリース契約が白紙となる場合があります。
その場合は、貸手に飛行機が返ってきますので、今後の選択肢としては中古売却か新しいリース先を見つけて契約を締結するかになります。
2018年、2019年などここ最近リース契約されている航空機もあり、既にオペレーティングリース投資を行った投資家にとってコロナの影響は小さくないでしょう。
コロナ後の航空機オペレーティングリースの見通し
気になる今後、コロナ収束後の航空機の需要に関してですが、様々なメディアで予測立てられています。
そこで最も気になるのは、コロナ後も既存のオペレーティングリースの仕組みが機能するのかどうか。
ここに関しては、現状のオペレーティングリースの仕組みは継続されるでしょう。
理由としては、今の世の中で航空機をはじめとした高額な物件を他の方法で所有、売買する新しい手段が現れていない、経済の仕組み上簡単にはあらわれないためです。
航空会社にとって自社で運行する飛行機を自社で全て購入することは、キャッシュフロー上行いにくく、これまでのようなオペレーティングリースの形式が利用しやすいのです。
実際に、全世界で運航されている航空機のうち60%弱は航空会社が自社で調達したもので、残りはリース会社からのオペレーティングリースによるものです。
そして、オペレーティングリースへの依存度は世界全体で年々増加しています。
航空会社が自社で飛行機を所有するよりもオペレーティングリースに依存する大きな要因は下記になります。
①最新・人気機種のスムーズな導入
現在は自社で新造機を購入するために発注しても納入まで数年単位で待つ状態。
オペレーティングリースであればスムーズに導入ができる。
②柔軟かつ計画的な財政状態
オペレーティングリースを利用することで、計画的なキャッシュフローを組むことが出来、会社として安定した運転資本で事業に集中することができる。
③機体の柔軟性
機体の入替えの自由度が高くなり、常に最新鋭の機体を所有することができる。
④巨額の前払い金が不要
通常、新造機の購入には巨額の前払い金が必要だが、オペレーティングリースは不要。
初期コストを大幅に減らせるため、良好なキャッシュフローを維持できる。
⑤LCCのや新興航空会社の普及
LCCや新興の航空会社は特にオペレーティングリースの割合が高く、運営のためにオペレーティングリースで機材にかかるコスト削減が必須である。
⑥残存価値のリスク
貸手であるオペレーティングリースのリース会社に帰属するため、リスクがない。
⑦調達コストの効率化
資金調達コストが高い航空会社にとって、オペレーティングリースを通じてリース会社の高い信用力を間接的に活用することができる。
これらの理由からも、オペレーティングリースは航空会社にとって必要な機能といえます。
飛行機の需要は続くのか?
また、航空機のオペレーティングリースが将来も続く一番の条件は「飛行機の需要」が増えるのかどうかです。
飛行機の需要は、世界の人口に比例しており、今後も世界人口が増加傾向にあるため、飛行機の需要がなくなることはありません。
また、飛行機の寿命は一般的に20~25年ほどと言われておりますが、機体の老朽化に伴いメンテナンス費用が増えてくる前に、機体を入れ替えることも多々あります。
それ以外でも、近年の急速な航空技術の発展に伴って、新造機の入れ替え頻度も増えています。コロナによる一時的な需要の停滞はありますが、長期的に見ると飛行機の需要は今後も高まっていくでしょう。
コロナによる金融と経済へのダメージ
ご存知の通り、コロナによる経済へのダメージは大きく、今後飛行機の需要は回復していくとはいえすぐに節税対策で航空機へ投資することは中々難しいかもしれません。
航空機を必要とする航空会社が、金融機関から資金を調達し経済的に立ち直った後に徐々に航空機の需要が復活することになります。
そうなると、これまで節税対策でオペレーティングリースを利用されていた経営者の方はどうするので良いでしょうか?
結論として、このコロナの状況はキャッシュを持っていることが安全です。
コロナの影響で日々倒産している企業がたくさん出ており、現状内部留保が多いことが安全なため、節税対策も大切ですが、今回のような事態では特例として対応する方が良いでしょう。
そのためにもコロナの収束後に効果的な節税対策ができるように準備をしておくことをおすすめします。
節税対策に人気だった金融商品「全損保険」とオペレーティングリース
かつては人気の節税対策として、「全損保険」がありましたが、2019年に国税庁よりメスが入り節税対策の商品として価値がなくなっています。
そんな全損保険に取って代わる節税対策が、今回コロナウイルスの影響で一時的な需要の停滞に陥っている状態のオペレーティングリース。
今後、節税効果対策を検討していく方は、オペレーティングリースを選択肢に入れておいて損はないでしょう。
今後のオペレーティングリース業界の見通し
これから、新たに作成されていくオペレーティングリースの案件がこれまでと同じような条件、節税におすすめな条件で続くかまだ見通しが立ちません。
ちなみに、国際航空運送協会(IATA)が 2020 年 5 月に、国際線に先立って国内線が 2022 年までに回復するという 見通しを発表しました。
コロナウイルスの収束の状況によってはどうなるか分かりませんが、コロナ収束し次第にすぐに市場の回復が早い業界だといえます。
また、航空会社が破綻してしまっているとはいえ、航空会社が完全になくなることはありません。
飛行機には世界中の人と物を運ぶ大切な役割があり、今後も変わることなく航空機が活躍する世の中です。
今後はニュース記事やセミナー、講演などで最新の情報を
このオペレーティングリースやファイナンスリースをはじめとしたリース取引の業界に関する最新情報は中々タイムリーに手にすることが難しいです。
コロナの影響により、自分から情報を探しに行かないと手に入らない情報も多いためオペレーティングリース関連の情報には常にアンテナを貼っておくことが良いでしょう。
日頃のニュース記事を読むだけではなくオペレーティングリースに関する講演会やセミナーに参加して専門家の話を聞いてみることも、今後を見据えた上で有益となります。
また、現状取り扱っている、最新のオペレーティングリースの案件に関してのご相談はぜひ「ひこうきの窓口」にお問い合わせくださいませ。