法人の節税対策
【法人】不動産の売却益にかかる税金は?経費の考え方とおすすめの節税方法

不動産の売却益に対して発生する税金とその節税方法を徹底解説

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法人税の節税対策として、不動産を所有している経営者の方も多いのではないでしょうか。

建物の費用を減価償却できることから節税効果を得られる不動産投資ですが、売却時に計上される益金にも税金がかかる点に注意が必要です。

ここでは、法人所有の不動産を売却した場合の税金のかかり方と仕訳について解説しています。

不動産売却益の節税ポイントやおすすめの節税対策も紹介しているので、不動産の売却を予定している方はぜひ参考にしてみてくださいね。

AFP(日本FP協会認定) / MDRT成績資格会員(COT)

この記事の監修担当者:渋谷幸司

新卒で大手鉄鋼商社に入社。5年半、日本を支える鉄鋼企業と世界の橋渡しに尽力した後、2015年外資系大手生命保険会社に転職。転職後も前職のお客様を金融業の側面から支えたいという想いで奮闘した。

日々取り組んでいく中で、世界情勢の変化や、日本社会の制度改定、お客様の思考変化を察知し、自身の事業変革を決断。

2018年大手上場金融代理店に入社し、生命保険業においてはMDRT、COT成績資格会員と実績を伸ばしつつ、所属会社で扱っていないDC(確定拠出年金)などを自ら会社の枠を超えて代理店契約するなど勢力的に活動。現在は保険営業マン向けのセミナー講師を務め、「先生」として同業者から熱い信頼を受けている。

個別相談のご要望も承りますので、お気軽にお問い合わせください。

不動産の売却益に対してかかる税金の種類

法人が不動産を売却した場合、売却益にはどのような税金がかかるのでしょうか。

まずは、不動産売却益にかかる税金の種類と税率について解説していきます。

法人税・法人住民税・法人事業税

不動産投資で発生した損益には、会社の収支と合算で確定申告できる「損益通算」の仕組みが適用されます。

不動産売却益に対して個別に課税されるのではなく、他の損益と合計したうえで利益が出た場合に、その利益分に対して税金がかかるということです。

法人税については、不動産売却益を含む年間利益が800万円を超えるかどうかによって税率が異なります。

中小企業の年間利益別の法人税率は以下の通りです。(令和2年4月1日現在法令等)

事業年度開始時期 800万円以下の部分 800万円超の部分
平成30年3月31日まで 15% 23.4%
平成30年4月1日から平成31年3月31日まで 15% 23.2%
平成31年4月1日以降 19% 23.2%

更に、法人税とともに「法人住民税」「法人事業税」も課税されます。

この3つの税金の合計税率を「実効税率」といい、現在の実効税率は年間利益800万円以下であれば23.17%、800万円を超える場合は33.58%程度です。(東京都・令和2年10月1日以降に事業年度開始の場合)

消費税

法人は課税対象事業者であるため、不動産売却益には消費税が課税されます。(消費税がかかるのは建物のみ)

消費税の負担を軽くしたい場合は、消費税分を上乗せした金額で売却価格を設定する必要があります。

ただし、消費税を上乗せすることで売却価格が高くなり、個人が売却する物件よりも売れにくくなるといったデメリットには注意が必要です。

登録免許税・印紙税

登録免許税は不動産の登記にかかる費用のことです。

また不動産売買契約書に貼る収入印紙に対して、以下の印紙税がかかります。

契約金額 印紙税率
10万円を超え、50万円以下のもの 200円
50万円を超え、100万円以下のもの 500円
100万円を超え、500万円以下のもの 1千円
500万円を超え、1千万円以下のもの 5千円
1千万円を超え、5千万円以下のもの 1万円
5千万円を超え、1億円以下のもの 3万円
1億円を超え、5億円以下のもの 6万円
5億円を超え、10億円以下のもの 16万円
10億円を超え、50億円以下のもの 32万円
50億円を超えるもの 48万円

なお、登録免許税や印紙税は租税公課に該当するため、経費として計上することができます。

法人における経費の考え方と仕訳方法

続いて、法人の不動産売却益の計算方法と仕訳について詳しく見ていきましょう。

不動産売却に関連する経費の考え方

不動産を売却する場合、売却益は一般的に以下の計算式で求めます。

【売却価格 - (物件価格 + 諸経費) = 売却益(または売却損)】

法人の場合、物件価格には「帳簿価額(簿価)」を用います。

簿価とは、不動産を取得したときの費用から減価償却費を差し引いた金額(=売却時の物件の価値)のことです。

また諸経費には、前述した租税公課などの不動産売買に関連する経費が該当します。

不動産売却時の仕訳

法人が不動産を売却した際の仕訳の流れは以下のようになります。

<契約時の仕訳>

法人で所有する不動産を3,500万円(建物:1,500万円・土地:2,000万円)で売却し、契約の際に手付金として1,500万円を受け取った場合。

借方 貸方
現金:15,000,000 前受金:15,000,000

<売却時の減価償却費の仕訳>

売却年の減価償却費が80万円だった場合。

借方 貸方
減価償却費:800,000 建物:800,000

建物については、売却した年の減価償却費を日割りで求める必要があります。

<売却時の損益の仕訳>

売却時の建物の簿価が1,000万円だった場合。

借方 貸方
前受金:15,000,000 土地:20,000,000
普通預金:20,000,000 建物:10,000,000
固定資産売却益:5,000,000

不動産売却時に、契約の際に計上した前受金の精算も行います。

不動産売却益を節税するには?

不動産売却によって多額の売却益を計上した場合は、税金の節税策を考える必要があるでしょう。

ここからは、法人税を節税するためのポイントについて解説していきます。

減価償却費を計上する

不動産売却益にかかる税金を節税するには、他の損金を経費計上して利益と相殺させるのがポイント。

法人の場合、売却益を利用して新たな不動産を購入するというのも1つの方法です。

法人は不動産所得に対して損益通算が行えるため、不動産購入によって発生する減価償却費などの経費を利用して所得を減らすことができるのです。

また減価償却処理の特例に該当する設備を購入すれば、通常の減価償却費にプラスして、特別償却による減価償却費を計上できます。

例えば「中小企業投資促進税制」では、160万円以上の機械・装置を購入した場合に、取得価額の30%相当の減価償却が認められています。

この他にも、特別償却にはいくつかの制度があるので国税庁の公式サイトをチェックしてみてください。(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/houji313.htm)

特別損失を出す

複数の不動産を所有している法人の場合は、簿価の高い不動産を売却して特別損失を出すという方法も1つ。

不動産投資は家賃収入などで利益を得るために行うケースが多いですが、資産として保有し、いざというときの節税対策に利用することもできるのです。

ただし、こちらは単に損失を計上するだけで設備投資のようなメリットもないため、基本的には減価償却費などで節税する方法がおすすめと言えます。

法人税の節税対策におすすめ【日本型オペレーティングリース】

減価償却費を計上して法人税を節税する方法の1つに、日本型オペレーティングリースがあります。

最後に、日本型オペレーティングリースの概要と、投資によって不動産売却益が節税される仕組みについて詳しく見ていきましょう。

日本型オペレーティングリースとは

オペレーティングリースとは、リース資産を長期にわたって貸し出し、リース料や売却益などを得る取引の仕組みです。

更に、リース資産の購入にあたって法人投資家からの出資を行えるようにしたものが「日本型オペレーティングリース」となります。

日本型オペレーティングリースでは、主に航空機・船舶・コンテナの3種類を取り扱っています。

航空機リースを例として、出資から利益計上までの動きを見ていきましょう。

  1. リース会社が匿名組合を立ち上げ、投資家(匿名)から航空機購入の資金を集める
  2. 投資家からの資金が不足している場合は金融機関から差額を借り入れる
  3. 出資金・借入金を使って航空機メーカーから航空機を購入する
  4. 購入した航空機で航空会社とリース契約を結び、リース会社がリース料を得る
  5. リース期間満了時に航空会社または市場が航空機を買い上げ、利益が投資家に分配される

法人投資家の動きとしては、匿名組合を通して出資を行い、リース期間満了時に益金の分配を受けるという流れになります。

投資で不動産売却益を節税する仕組み

日本型オペレーティングリースの場合、物件の所有者は匿名組合となり、減価償却も物件の全体価格に対して行われます。

しかし匿名組合自体は法人格ではないため、減価償却費の計上は各法人投資家へ分配されたあとで行うことになるのです。

つまり、出資初年度から多額の減価償却費を損金算入でき、結果として課税所得を引き下げられるという仕組みです。

数千万円~数億円単位で減価償却費が計上されるため、不動産売却益の節税にも非常に効果的。

継続的な節税としてではなく、突発的な利益の繰り延べ策として多くの法人で活用されています。

また、日本型オペレーティングリースへの出資によって会社の資産が減少すると、一時的に株価も下落します。

このタイミングで株式移転を行えば、譲渡時にかかる相続税・贈与税の節税が可能に。

更に、リース期間満了時に分配される益金と現社長の退職金を相殺させることで出口対策も行えるなど、オペレーティングリースは節税メリットの多い手法と言えます。

まとめ

  • 法人が不動産を売却した場合、法人税や消費税などの税金が発生する
  • 売却益を節税するには、減価償却費の計上による利益の圧縮がおすすめ
  • 法人税の節税対策として、多額の減価償却費を計上できる日本型オペレーティングリースが人気

不動産運用自体も節税に効果があるとして人気を集めていますが、投資の際は売却益が出た場合の出口戦略もセットで考える必要があるでしょう。

減価償却費によって利益を繰り延べられる日本型オペレーティングリースは、不動産売却益の節税に効果的な手法です。

日本型オペレーティングリースを使った節税対策に興味をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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