法人の節税対策として、社用車の購入を行うことがあります。
この記事では、法人が車を購入することで得られる節税対策の効果とメリット・デメリットを解説。
節税効果を高めるためのポイントや、その他の法人税対策についても紹介しているので、法人税の節税方法でお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
生命保険協会認定FP(TLC) / 相続診断士 / MDRT成績資格会員(COT)
この記事の監修担当者:高橋進
新卒で大手百貨店に入社。食料品部では催担当、労働組合では執行役員を務め、接客販売と社内改善に貢献。グッドサービス賞受賞。
その後2013年、外資系大手生命保険よりヘッドハンティングを受け転職。各コンテストで入賞を果たし、個人保険全国3200人中4位特別表彰など業績を拡大。2015年大手上場金融代理店に入社。
MDRT、COT成績資格会員と実績を伸ばし、ワンストップで顧客のための金融サービスを展開する独立型資産形成アドバイザーとして、マネーセミナー講師をしながら、個人から法人、幅広く提案している。その後、非金融業界の会社経営などにも参画し、幅広い知識と経験を持つ。
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社用車の購入が法人税の節税対策になるワケ
法人として車を購入すると、その購入金額や付随する費用を経費として計上でき、節税対策の効果を得られます。
まずは、社用車の購入費用を経費化する仕組みと、より大きな節税効果を得るためのコツについて詳しく見ていきましょう。
減価償却の種類と計算方法
車や機械設備、建物などの資産を購入した場合に、その費用を一括で経費計上するのではなく、特定の期間で分割して経費計上するようにした仕組みを「減価償却」といいます。
減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」の2種類があり、それぞれの計算式は以下の通り。
定額法 | 取得価額×定額法の償却率 |
---|---|
定率法 | 取得価額もしくは未償却残高×定率法の償却率 |
定額法が毎年一定の金額を償却する方法であるのに対し、定率法は初年度の償却額が大きく、その後は少しずつ減少していく方法となっています。
原則として、個人の場合は定額法、法人の場合は定率法による減価償却が必要です。(税務署に届出を行えば別の償却方法へ切り替えることも可能)
節税対策には新車よりも中古車の方が効果的
車の減価償却期間(法定耐用年数)は、購入した車が新車であるか中古車であるかによって異なります。
新車・中古車それぞれの耐用年数と償却率は以下の通り。(カッコ内は軽自動車の場合)
使用期間 | 耐用年数 | 定額法の償却率 | 定率法の償却率 |
---|---|---|---|
新車 | 6年(4年) | 0.167(0.25) | 0.333(0.5) |
~15ヶ月 | 5年(3年) | 0.2(0.334) | 0.4(0.667) |
16ヶ月~30ヶ月 | 4年(2年) | 0.25(0.5) | 0.5(1.0) |
31ヶ月~45ヶ月 | 3年(2年) | 0.334(0.5) | 0.667(1.0) |
46ヶ月~ | 2年(2年) | 0.5(0.5) | 1(1.0) |
また中古車の場合は以下の“簡便法”を使って耐用年数を求めることも可能です。
法定耐用年数の一部を経過した場合 | (法定耐用年数-購入時点での使用期間)+購入時点での使用期間×20% ※1年未満の期間は切り捨て |
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法定耐用年数の全部を経過した場合 | 新車時の法定耐用年数×20% ※1年未満の期間は切り捨て |
なお計算結果が2年未満になった場合は、2年で減価償却を行います。
例えば、200万円の普通自動車(新車)を購入した場合の、初年度の減価償却費は以下の通りです。
200万円×0.333(耐用年数6年の償却率)=666,000円
一方、200万円の普通自動車(2年落ちの中古車)を購入した場合の、初年度の減価償却費は以下となります。
(6年-2年)×2年×20%=4.4年
200万円×0.5(耐用年数4年の償却率)=1,000,000円
つまり、2年落ちの中古車を購入した場合、新車と比較して初年度の減価償却費が334,000円も大きくなるということです。
付随する費用も経費化が可能
法人として車を購入した場合、税金や保険料などの定期的に発生する維持費についても損金算入が認められています。
経費計上が可能な費用の種類は以下の通り。
- 自動車取得税
- 自動車重量税
- 自賠責保険料
- 任意保険料
- 車検費用
- ガソリン代
- 高速道路利用料金
- 駐車場料金 など
基本的に車に関連する維持費の全てを経費化できますが、廃車時にかかるリサイクル預託金については経費計上できないので注意しましょう。
また社用車兼プライベートカーとして利用する場合は、社用車として利用した費用だけを按分して経費計上する必要があります。
社用車を使った節税のメリット・デメリット
車を購入することで法人税の節税対策になる一方、売却価格の予想が立てにくいといったデメリットもあります。
続いて、社用車による節税対策のメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット①:4年落ちの中古車なら1年で償却できる
節税目的で中古車を購入するのであれば、4年落ち以上の中古車を選ぶのがおすすめです。
4年落ちの場合は法定耐用年数が2年(償却率1.0)となり、取得価額の全額をその年に経費計上できるからです。
数年にわたって少しずつ節税したい場合は新車でも良いですが、利益の繰り延べなどに活用する場合は4年落ちの以上の中古車を選ぶようにしましょう。
メリット②:金額を調整しやすい
車の値段はメーカーや車種、状態などによって幅があるため、節税したい金額に合わせて車を選べます。
節税額を大きくしたい場合は高級車、少しだけ節税額を増やしたい場合は軽自動車というように、金額を調整しやすい点もメリットの1つです。
デメリット①:売却時に損をするリスク
節税目的で購入した車は、減価償却を終えたところで売却するケースが多いです。
このとき、取得価額よりも大幅に低い金額で売却することになると、節税額以上の損失となってしまう可能性も。
特に事故を起こした車などは価値が下がりやすくなります。
将来のリスクを踏まえ、中古でも価値の落ちにくい車種を選ぶといった工夫が必要です。
デメリット②:維持費がかかる
車に関連する維持費は種類が多く、トータルでみると大きな金額となります。
経費化によって節税対策に活用することは可能ですが、キャッシュフローに影響を与えるような場合は注意が必要。
節税目的のためだけに車を購入する場合は、コストとの比較をよりしっかり行いましょう。
法人税対策に社用車を使う場合のポイント
より高い節税効果を得るためには、車を購入するタイミングなども重要となります。
ここからは、法人税対策として車を購入する場合の注意点について詳しく見ていきましょう。
購入するタイミング
減価償却費の計算に用いる使用期間は、年単位ではなく月単位で求める必要があります。
そのため、決算に近いタイミングで購入すると減価償却期間が短くなり、節税対策の効果もその分少なくなってしまうのです。
例として、200万円普通自動車(4年落ちの中古車)を購入した場合の減価償却費一覧を見てみましょう。
購入時期 | 計算式 | 減価償却費 |
---|---|---|
4月1日(期首) | 200万円×1.0×12ヶ月/12ヶ月 | 200万円 |
10月1日 | 200万円×1.0×6ヶ月/12ヶ月 | 100万円 |
2月1日 | 200万円×1.0×2ヶ月/12ヶ月 | 33.333万円 |
※1ヶ月に満たない期間は繰り上げとなり、例えば2ヶ月10日であれば3ヶ月として計算します。
このように、車を購入するタイミングによって減価償却費に大きな差が出ることが分かります。
多額の減価償却費を初年度に算入したい場合は、期首に近いところで購入するのがおすすめです。
会社に利益をもたらすかどうか
中古車の購入は法人税の節税対策に効果のある手法ですが、購入した車が事業に活用されなければ意味がありません。
また中古車は新車と比べてメンテナンス費用がかかりやすいため、トータルの経費としては大きくなってしまう可能性もあります。
そのため、車の購入が事業にとって必要なものなのか、また車を購入することで利益をもたらしてくれるのかといった点をしっかり考える必要があるでしょう。
不要な経費を支払うことは、法人税を多く支払うことよりも無駄な支出と言えます。
節税対策だけを目的とするのではなく、事業としてのメリット・デメリットを踏まえて購入を検討してみてください。
法人税の節税対策ならオペレーティングリースもおすすめ
中古車の購入以外にも、法人税の節税対策に活用できる手法はいくつもあります。
中でもおすすめしたいのが、航空機や船舶などの高額資産に投資する「日本型オペレーティングリース」です。
日本型オペレーティングリースでは、リース資産の購入に法人として出資を行うことで、出資額に応じた損益の分配を受けられます。
詳しいオペレーティングリースの流れは以下の通り。(航空機リースの場合)
- リース会社が匿名組合(ファンド)を立ち上げ、法人投資から航空機購入の資金を集める
- 法人投資家からの資金が不足している場合は金融機関から差額を借り入れる
- 出資金・借入金を使って航空機メーカーから航空機を購入する
- 購入した航空機で航空会社とリース契約を結び、リース会社がリース料を得る
- リース期間満了時に航空会社または市場が航空機を買い上げ、利益が法人投資家に分配される
リース期間中は匿名組合が航空機の所有者となるため、航空機の全体価格に対する減価償却費を法人の損失として計上できるのが特徴。
商品によっては出資初年度に出資額の70%~80%を損金算入することができます。
オペレーティングリースなら数千万円~数億円単位の損金算入も可能なため、利益対策として有効です。
また車のような維持費もかからないため、1回の出資だけで簡単に節税対策ができる手法として法人の間で広く活用されています。
まとめ
- 社用車の購入によって節税対策を行う場合は、新車よりも中古車の方が効果が大きい
- 車を購入する場合は、事業に必要な支出であるかどうかをしっかりと検討することが大切
- 法人税の節税対策ならオペレーティングリースへの投資を活用した利益の繰り延べもおすすめ
4年落ち以上の中古車なら短期間での減価償却ができ、高い節税効果を得られるというメリットがある一方、タイミングを誤ると効果が薄れるといった注意点も。
そもそも事業に車が必要ない場合は、無理に中古車を購入するのではなく、投資を活用するなど別の節税対策を選択するのもおすすめです。