個人または法人として事業を行っていくうえで、避けて通れないのが毎年の納税です。
この記事では、駆け込み的に法人税の節税を行うことが可能な、おすすめの決算対策について解説しています。
決算前に大きな利益が出てしまい、どのように節税すれば良いか悩んでいるという経営者の方はぜひ参考にしてみてください。
生命保険協会認定FP(TLC) / 相続診断士 / MDRT成績資格会員(COT)
この記事の監修担当者:高橋進
新卒で大手百貨店に入社。食料品部では催担当、労働組合では執行役員を務め、接客販売と社内改善に貢献。グッドサービス賞受賞。
その後2013年、外資系大手生命保険よりヘッドハンティングを受け転職。各コンテストで入賞を果たし、個人保険全国3200人中4位特別表彰など業績を拡大。2015年大手上場金融代理店に入社。
MDRT、COT成績資格会員と実績を伸ばし、ワンストップで顧客のための金融サービスを展開する独立型資産形成アドバイザーとして、マネーセミナー講師をしながら、個人から法人、幅広く提案している。その後、非金融業界の会社経営などにも参画し、幅広い知識と経験を持つ。
個別相談のご要望も承りますので、お気軽にお問い合わせください。
決算対策とは?法人における節税の必要性
決算対策とは、節税手法を用いて確定申告の際に支払う法人税の金額を抑えたり、決算に備えて準備を進めたりすることをいいます。
まずは、法人における決算対策の重要性と、決済前に取り組むべき項目について詳しく見ていきましょう。
決算対策の必要性
節税対策が不十分の状態で決算を迎えてしまうと、本来なら削減できた法人税まで納めることになってしまいます。
節税手法には、決算対策として駆け込み的に行えるものだけでなく、中長期での計画が必要なものなど様々な種類があります。
決算が迫ってくると利用できる節税手法も限られてくるため、前もって法人税対策を進めておくことが大切なのです。
決算3ヶ月前から取り組むべきこと
決算対策を行う際は、決算直前ではなく3ヶ月程度前もって準備を始めていく必要があります。
まずは節税前の準備として、今期の利益や納税の予測をまとめた決算対策のシミュレーションを行いましょう。
決算対策のシミュレーションでは、9ヶ月目までの月次損益のデータを用いて、残り3ヶ月間を含めた年間の総利益および経費を予測します。
続いて算出された総利益から経費を差し引き、当期の純利益予測を算出しましょう。
純利益の予測を立てることができたら、あとは残りの3ヶ月でどのような節税を行うべきかを検討します。
このシミュレーションは3ヶ月前だけでなく、2ヶ月前・1ヶ月前にも実践することで、より効果的な法人税の節税対策を実施できるでしょう。
法人の決算対策として活用できる節税方法
続いて、実際に決算対策として利用することができる法人向けの節税手法を解説していきます。
法人だからこそ使える節税対策も多いので、個人事業から法人成りして間もない会社の場合でも、一通りチェックしておくようにしましょう。
決算賞与の支給
決算時に、従業員に対して支給される賞与を決算賞与といいます。
決算期末までに従業員へ支給額を通達する必要がありますが、支給自体は決算前・決算後のどちらでも可能です。
決算後の支払いであっても、当期の損金として計上することが認められています。
ただし、決算後に支給する場合、遅くとも決算期末から1ヶ月位内に支給を行うことが条件となります。
決算賞与の支給は節税効果を得られるだけでなく、従業員のモチベーションアップになるというメリットもあるため、おすすめの決算対策と言えるでしょう。
使用していない固定資産の売却・除却
既に使用していない固定資産が会社に残っている場合は、売却または除却を行って処分するのがおすすめです。
資産として計上していたものがなくなり、売却損または除却損として経費計上することで法人税を節税できます。
また固定資産の除却にかかるコストの調達が難しい場合は、固定資産を手元に残したままで除却損を計上できる「有姿除却」の活用が便利です。
こちらは固定資産がすでに使用されておらず、今後も使用予定がないことが認められた場合に適用できます。
税務調査などで確認を受けることが多い項目となるので、使用していないことを証明できる資料などを用意しておくとスムーズです。
家賃・保険料などの前払い
継続的なサービスに対して支払う費用で、かつ支払いから1年以内にサービスの提供を受けるものであれば、その費用を全額「短期前払費用」として損金計上することができます。
会社が入っているビルに支払う賃料や、年払いとなっている保険料などが該当します。
ただし決算対策として前払いを利用できるのは最初の1年だけであるため、永続的な節税効果は望めない点に注意が必要です。
未払費用の計上
社会保険料・通信費・広告宣伝費などの経費は、未払費用として今期の決算で計上することができます。
例えば社会保険料の場合、4月末に引き落とされるのは3月分の社会保険料です。
このように、「今期の費用として発生したものの、支払いが翌期になる費用」は今期の決算に含められるのです。
はじめに紹介した決算賞与なども未払費用の1つとなります。(支払いが決算後となる場合)
少額減価償却資産の特例
税法上の中小企業に該当する法人に限り、30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、合計金額300万円を上限として全額損金算入することが認められています。
もともと2020年までの期限付きの特例でしたが、令和2年度の税制改正において、適用期限が令和4年(2022年)まで延長されることが決定しました。
将来必要となる備品・消耗品の購入
近い将来必要となる事務用品などの消耗品を前倒しで購入しておくというのも決算対策の1つです。
本来、消耗品は「使い始めた日」に経費計上することとなっていますが、以下の要件を満たすものに限り、すぐに経費化することができます。
- 毎年、おおむね一定量の購入を継続している
- 毎年、経常的に消費されている
- 毎年、同じ方法で経理処理を行っている
出張旅費規定の作成
出張旅費規定とは、出張に際して必要となる交通費・宿泊費・その他費用に対する取り扱いを定めた規定のことです。
出張旅費規程には以下のような項目を記載する必要があります。
- 出張旅費規程の目的
- 適用範囲
- 出張の定義
- 費用の種類と支給額
- 申請や清算などの手続き方法
出張旅費規程を作成することで、出張手当として支給した金額の経費計上が可能となり、大きな節税効果を見込めます。
インターネットから出張旅費規程のテンプレートをダウンロードすれば簡単に作成できるので、駆け込みの決算対策としておすすめです。
中小企業向け共済への加入
決算対策の1つとして、中小企業向けの共済制度に加入して掛け金を経費計上するという方法もあります。
中小企業向けの共済には以下のようなものが挙げられます。
小規模企業共済 | 社長自身の退職に備えて、社外に退職金を積み立てておくための制度 |
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中小企業退職金共済 | 従業員の退職に備えて、社外に退職金を積み立てておくための制度 |
中小企業倒産防止共済 | 取引先が倒産した場合などに、掛け金の最大10倍の融資を無担保・無保証・無利子で受けられる制度 |
中小企業倒産防止共済に関しては、掛け金を全額経費計上できるだけでなく、40ヶ月以上支払ったあとに解約すれば、100%が手元に戻る仕組みです。
社外に積み立てているだけで節税ができ、更に万が一の保障も得られるため、会社にとってメリットのある決算対策と言えるでしょう。
多額の損金で利益の繰り延べができる「日本型オペレーティングリース」
決算対策として駆け込み的に節税を行うなら、法人向け投資商品の活用もおすすめです。
ここからは、利益の繰り延べによって大きな節税効果を期待できる法人向け投資商品「日本型オペレーティングリース」について詳しく見ていきましょう。
日本型オペレーティングリースの仕組み
日本型オペレーティングリースとは、オペレーティングリース取引と匿名組合の契約形態を組み合わせた投資商品のことです。
リース会社が保有する資産の購入に法人として出資ができ、出資額に応じた損益の分配を受けることで節税を行う仕組みとなっています。
出資可能なリース資産には航空機・船舶・コンテナなどがあり、大まかな投資の流れは以下の通りです。(航空機リースの場合)
- リース会社が匿名組合を立ち上げ、法人投資家から航空機購入の資金を集める
- 法人投資家からの資金が不足している場合は金融機関から差額を借り入れる
- 出資金・借入金を使って航空機メーカーから航空機を購入する
- 購入した航空機で航空会社とリース契約を結び、リース会社がリース料を得る
- リース期間満了時に航空会社または市場が航空機を買い上げ、売却時の利益が法人投資家に分配される
減価償却費の計上による節税効果
リース期間中におけるリース資産の所有者は匿名組合ですが、匿名組合自体は法人格を持っていません。
そのため、匿名組合で計上される減価償却費は、出資額に応じて各法人投資家へ分配されることになります。
法人投資家はこの減価償却費を会社の損益と通算することで、課税所得を圧縮して節税効果を得られるという仕組みです。
日本型オペレーティングリースでは、航空機や船舶といった高額な物件を取り扱います。
またこれらの物件は定率法で減価償却されるため、出資額によっては数千万円~数億円単位の減価償却費を計上することができます。
中には出資初年度から出資額の70~80%を損金算入できるものもあり、突発的な利益対策として有効な手段と言えるでしょう。
オペレーティングリース投資は決算対策に使える
日本型オペレーティングリースの商品の中には、当月決算向けのものがラインナップされることもあります。
余裕を持って出資するに越したことはないですが、決算対策として駆け込み的に利用できるケースもあるため、追加の節税が必要な場合は検討してみると良いでしょう。
まとめ
- 法人で正しく節税を行うには、遅くとも決算3ヶ月前から見直しを進めていく必要がある
- 駆け込み的に利用できる法人向けの決算対策として、決算賞与の支給や翌期分費用の前払い・未払い計上などがある
- 大幅な節税を狙いたい場合は、日本型オペレーティングリースなどの投資商品の活用もおすすめ
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