全損保険に代わる法人税の節税手法として注目を集めていた航空機オペレーティングリース。
しかし、2019年に発生した新型コロナウイルスの感染拡大で航空機需要が落ち込み、経済に大打撃を与えました。
ここでは、新型コロナウイルスによる航空機オペレーティングリースへの影響について、2020年11月時点の最新情報をお伝え。
オペレーティングリースを使った節税対策を実施している方は、常に最新情報をチェックしておきましょう。
ファイナンシャルプランナー / 生命保険協会認定FP / MDRT成績資格会員
この記事の監修担当者:伊藤理沙
日系大手生命保険会社で活躍後、2015年より保険代理店に所属。ライフプラン、家計の見直し等の個人コンサルティングを主軸に、ライフプランセミナー等の講演活動も行っている。相談件数は2,000件以上。
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新型コロナウイルスと航空機オペレーティングリースの関係
新型コロナウイルスによる航空業界へのダメージは大きく、2020年3月頃から立て続けに航空会社の経営破綻が報じられています。
まずは、新型コロナウイルスによる需要減で経営破綻に追い込まれた航空会社と、航空会社の破綻が与えるオペレーティングリースへの影響について詳しく見ていきましょう。
コロナショックで経営破綻した航空会社
オペレーティングリースの案件を抱える航空会社の中で、新型コロナウイルスによって経済危機を迎えた会社は以下の通りです。
航空会社 | 経営状況 |
モーリシャス航空 | 自主管理(事実上の経営破綻) |
ヴァージョンオーストラリア航空 | 破産 |
アビアンカ航空 | 破産 |
LATAM航空 | 破産 |
アエロメヒコ航空 | 破産 |
タイ航空 | 破産 |
南アフリカ航空 | 破産 |
ノルウェー・エアシャトル航空 | 破産 |
アリタリア航空 | 国営化(事実上の経営破綻) |
フライビー航空 | 破産 |
この他にも、LCCのノックスクートの事業終了やエアアジア・ジャパンの日本事業撤退など、国内外で多くの航空会社が経営破綻に陥っています。
ナショナルフラッグキャリアであれば政府からの支援が得られる可能性もありますが、LCCや新興国の航空会社は今後も厳しい状況が続くことが予想されるでしょう。
リース先が経営破綻するとオペレーティングリースはどうなる?
そもそも航空機オペレーティングリースがどういった仕組みなのか、大まかな流れを解説します。
- リース会社が匿名組合を立ち上げ、投資家(匿名)から航空機購入の資金を集める
- 投資家からの資金が不足している場合は金融機関から差額を借り入れる
- 出資金・借入金を使って航空機メーカーから航空機を購入する
- 購入した航空機で航空会社とリース契約を結び、リース会社がリース料を得る
- リース期間満了時に航空会社または市場が航空機を買い上げ、利益が投資家に分配される
法人投資家は飛行機の購入に出資を行うことで、出資額に応じた減価償却費を損金算入できます。
またリース終了後の飛行機を売却したタイミングで売却益が入り、この益金を事業承継の退職費用などと相殺して出口対策とするのが一般的な流れです。
では、航空会社が新型コロナウイルスによって破産・経営破綻となった場合、オペレーティングリースにはどのようなリスクがあるのでしょうか。
1つ目はリース料の不払いによる損失の拡大です。
10年間の契約となっていたオペレーティングリース案件が5年目で経営破綻した場合、残り5年分のリース料が支払われないことになります。
そのため航空機売却後に計上される益金が出資側を大きく下回る可能性があるのです。
次に、航空機の売却価格の下落というリスクがあります。
経営破綻の航空会社で利用されていた航空機は、リース会社で引き取って管理しなければなりません。
リース料が得られない一方、航空機にかかる駐機費用やメンテナンス費用は継続して発生するため、リース会社としては早急に売却したいと考えます。
結果、売却価格よりも売却時期を優先することで、想定を下回る価格での売却となる場合があるのです。
なお新型コロナウイルスの感染拡大は現在も続いており、そもそもの航空機の売却価格が下落していることも懸念事項の1つです。
コロナ禍の中でオペレーティングリースを行うメリットはある?
新型コロナウイルスの収束が見えない状況で、新たにオペレーティングリースを行うことは可能なのでしょうか。
続いて、オペレーティングリースのメリットと注意点を解説していきます。
オペレーティングリースは節税に効果的
オペレーティングリースは多額の減価償却費を損金算入でき、大幅な法人税の節税が可能となる点が特徴です。
また事業承継と絡めることで、出口戦略を描きやすいのもポイント。
そのため、突発的に大きな利益を得た会社や、事業承継を予定している会社では引き続きメリットのある手法と言えます。
新型コロナウイルスで経営が悪化している業界は多いですが、一方で“コロナ特需”が起きている業界もあるのです。
コロナ禍の中でも大きな利益を計上している会社は、オペレーティングリースによる節税も1つの手段として検討する価値があるでしょう。
オペレーティングリースの案件選びは慎重に
コロナ以前から言えることですが、現在は更にオペレーティングリースの案件選びが重要となっています。
航空会社の経営破綻はオペレーティングリースの出口戦略に大きく影響するため、破綻のリスクが少ない航空会社を選ばなければなりません。
航空会社の財務基盤を調査し、安全性の高い案件へ投資を行うことが重要です。
まとめ
- 新型コロナウイルスによって多くの航空会社が破産・経営破綻という状況へ追い込まれた
- 航空会社が経営破綻すると、オペレーティングリースの出口で得られる益金に影響する
- 今後オペレーティングリースを利用する際は、リース先となる航空会社選びがより重要となる
オペレーティングリースは法人税の節税対策として有効な手段ですが、今後は新型コロナウイルスによる影響を踏まえて判断していかなければなりません。
会社の節税対策にオペレーティングリースを検討している方は、ぜひ一度当サイトまでご相談ください。