オペレーティングリースの基礎知識
オペレーティングリース取引で買取があった場合の会計処理

オペレーティングリースの買い取りは特別な処理や仕訳が必要か

オペレーティングリース,買取,会計処理

匿名組合を通して航空機や船舶、コンテナ、機械など、さまざまな種類の高額な資産のリースを行う「日本型オペレーティングリース」は、法人の節税対策(課税の繰延べ)として注目を集めていますが、会計処理方法についてはあまり知られていません。

ここでは、日本型オペレーティングリースに出資した時の会計処理、リース期間終了後のリース物件の買い取り時の会計処理と税務処理を中心にご紹介します。

ファイナンシャルプランナー / 生命保険協会認定FP / MDRT成績資格会員

この記事の監修担当者:伊藤理沙

日系大手生命保険会社で活躍後、2015年より保険代理店に所属。ライフプラン、家計の見直し等の個人コンサルティングを主軸に、ライフプランセミナー等の講演活動も行っている。相談件数は2,000件以上。

個別相談のご要望も承りますので、お気軽にお問い合わせください。

日本型オペレーティングリース取引の会計処理(借手)の特徴

日本型オペレーティングリース取引の会計処理は、通常の上場会社の株式に投資した場合と異なります。

上場株式を取得した場合は、株式取得時に有価証券として資産計上し、その後は売却して利益を得る(キャピタルゲイン)などを行わない限り特別な会計処理は必要ありません。例外として、有価証券の時価が取得価額の50%未満になった場合は有価証券評価損(減損処理)を行います。

一方、日本型オペレーティングリース取引では匿名組合を通じて投資を行っているため、「有限責任事業組合(LLP)に対する出資者の会計処理に関する取扱い」に準じて会計処理を行うことになります。

LLPとは、通常の法人とは違い「民法上の組合」に定義されます。LLPには法人税等が課税されず、LLPの利益または損失は構成員である出資者へ直接課税されることになります。

これを「パススルー課税(構成員課税)」と言い、会計処理についてもパススルー課税に準じた仕訳が必要になります。

LLPの3つの会計処理基準

LLPの会計処理は、企業会計基準委員会の「有限責任事業組合及び合同会社に対する出資者の 会計処理に関する実務上の取扱い(平成21年)」により、次の3つが認められています。

①純額方式(Net-Net法)
貸借対照表、損益計算書ともに出資金の持ち分相当額の「純額」を計上する方法。

②損益計算書方式(Gross-Net法)
貸借対照表は持ち分相当額を純額で計上し、損益計算書は「損益項目」ごとに純額を計上する方法。

③総額方式(Gross-Gross法)
貸借対照表、損益計算書ともに「項目」ごとに純額を計上する方法。

LLPの損益を「匿名組合投資損益」の科目で会計処理する方法を純額方式、LLPの各損益科目(売上や管理費など)ごとに分けて計上する方法を損益計算書方式、総額方式と言います。

一般的には、LLPの損益をその法人の主たる事業と区分するため純額方式がよく使われています。

日本型オペレーティングリース取引の主な会計処理(純額方式)

日本型オペレーティングリース取引の会計処理(純額方式)は、「①匿名組合に出資した時」「②匿名組合から損益の報告があった時」「③匿名組合が解散し出資金が返金された時」に次の会計処理が必要になります。

①匿名組合に出資した時の仕訳

出資金 XXXX/現金預金 XXXX

②匿名組合から損益の報告があった時の仕訳

匿名組合未収入金 XXXX/匿名組合投資利益 XXXX

又は

投資組合投資損失 XXXX/匿名組合未払金 XXXX

③匿名組合が解散し出資金が返金された時

現金預金 XXXX/出資金 XXXX

純額方式によるオペレーティングリースの会計処理はとてもシンプルです。基本的に出資中は年に1回(又は2回。匿名組合の事業期間による)会計処理を行うだけです。

オペレーティングリース物件を売却した場合(リース物件の買取)の会計処理(純額方式)

日本型オペレーティングリース取引では、リース契約終了時(解約時)に航空会社などリース先から航空機などのリース物件の買取依頼が行われることがあります。

これは、オペレーティングリース契約に「購入選択権」が付いていることが多いためです。この契約を購入選択権付日本型オペレーティングリース契約(JOLCO)と言います。

購入選択権があると、リース物件の買取を行うか、または買取を行わずにリース契約満了でリース資産を返却するかの選択をリース先の会社が判断することができます。

リース先がリース物件を買取る場合の出資者の会計処理(純額方式)は、特別な処理は必要ありません。

純額方式では、匿名組合の損益を一括して匿名組合投資損益として計上するため、リース物件を売却した場合(買取時)に発生する固定資産売却益についても匿名組合投資損益に含まれることになるからです。

リース物件を売却した場合(買取時)の会計処理(総額方式)

リース物件売却時(リース先の買取時)の純額方式での会計処理は通常の会計処理と同様の処理を行いましたが、総額方式で会計処理をしている場合は少し複雑です。ここでは、リース物件売却時の会計処理(総額方式)について具体例とともにご紹介します。

具体例
・1億円を匿名組合に出資。(匿名組合への総出資額は10億円。出資割合10%)

・匿名組合は銀行から5億円借入(利息は考慮せず)、15億円のコンテナを購入し、貿易会社と購入選択権付オペレーティングリース契約を行い、年間2億円のリース料収入を得ている。

・リース期間終了後、貿易会社からコンテナ(減価償却後の帳簿価格5,000万円)の買取依頼があり、3億円で売却(売却益2億5,000万円)

・コンテナ売却時の貸借対照表は次の通り

現預金 10億円/借入金 2億円

コンテナ 5,000万円/出資金 10億円

/繰越利益剰余金 -1億5,000万円

上記の貸借対照表にコンテナ売却の処理を追加すると、次の精算表となる

現預金 13億円/借入金 2億円

/出資金 10億円

/繰越利益剰余金 -1億5,000万円

/固定資産売却益 2憶5,000万円

出資者の会計処理(総額方式)
総額方式による会計処理は出資割合に応じて貸借対照表、損益計算書を項目ごとに計上する方法です。匿名組合への出資割合は10%になるため、以下の会計処理が必要になります。

現預金 1憶3,000万円/借入金 2,000万円

/組合出資金 8,500万円(出資金+繰越利益剰余金)

/固定資産売却益 2,500万円

損益計算書方式での会計処理

上記の具体例を損益計算書方式により、会計処理を行うと次の通りになります。

出資者の会計処理(損益計算書方式)
匿名組合投資未収入金 2,500万円/固定資産売却益 2,500万円

税務と会計の取扱いが異なる点

パススルー課税により、匿名組合(LLP)が得た利益には匿名組合で法人税等が課税されず、出資者(組合員)に課税されます。

会計上、組合員は匿名組合の損益を出資の持ち分に応じて計上することになり、基本的には税務についても同様の処理を行います。

ただし、税法では「組合事業等による損失がある場合の課税の特例」という規定があります。この規定では、組合員が匿名組合に出資した金額を上限として税務上の損金を認める規定です。

つまり、組合員が1憶円投資した場合は、匿名組合投資損が累計1憶円までしか税務上損金として認められません。この取扱いは、税務と会計で大きく異なります。

節税目的で投資を行ったつもりが、税務上の損金が少なく、効果的な節税に繋がらないケースもありますので注意が必要です。

リース資産買取り手順

一般的な日本型オペレーティングリース契約には、購入選択権のオプションが付いていることが多いため、ほとんどのケースでリース終了後にリース物件の買取が行われます。

実務的には、リース期間終了1年前にはリース先がリース資産の買取を行うかどうかの意思決定を行い、匿名組合に通知することが多いです。

また、購入選択権付オペレーティングリースの場合でリース終了後に買取を行わない場合には、厳しい条項が付けられることが多くあります。

例えば、航空機のリースで買取を行わない場合は、航空機を新品同様にして匿名組合に返還しなければならないという条項が付けられていることが多くあります。そのため、リース終了後に買取を行わない航空会社は極めて少ないです。

まとめ

今回は、節税効果の大きい日本型オペレーティングリース取引のリース資産の買取についてご紹介しました。出資者の会計処理は3つの方法が認められており、どの方法で処理を行っても会社の損益に異なった影響を与えるものではありません。

ただし、会社の貸借対照表、損益計算書の表示が大きく異なりますので、どの会計処理を採用すればよいか十分検討しましょう。

総額方式を採用した場合のリース資産買取時には、多額の固定資産売却益が損益計算書に計上されることになる旨も留意する必要があります。

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